(06-003)

破裂

破裂

医療ミスを扱ったノンフィクションで一山当てたいジャーナリストと彼に情報を提供する麻酔医、その麻酔医の所属する大学病院で手術ミスを犯した心臓外科助教授と彼を提訴した被害者遺族、その助教授の研究内容を高齢化社会対策に利用しようとする厚労省の官僚を通して、日本における医療と高齢化の問題を浮き彫りにする小説。
医療ミスを題材にした部分で、脂の乗ったジャーナリストなら鼻で笑うくらいの話をあたかも驚愕の事実のように書いている点は、やはり著者が医者だからだろうか。ただ、高齢者対策として高齢者数を意図的に減らすという視点は、その善悪は別にして僕にとっては新しいものだった。
自分や家族の老後を考えさせられた。答えなんかまだ出るわけもないが、僕は少なくともいつも希望を持っていたいし、絶望の中で死にたくはない。