(05-060)

孤将

孤将

敵の刀は厳かだ。柄に目をあて先端を透かして見ると、終わりが点に見える。その点は鋼の極限だ。刀はその点の向こう側に消え失せてしまったかのようだ。刃の上で鋼は猛烈な勢いで消滅している。鋼は鋼の外に飛び出そうとし、その境界に沿って刃は消滅するぎりぎりの痕跡を残している。その上には長い血溝が刃に沿って消滅点まで伸びている。刃についた血を集め、流れさせる血溝は光に満ち溢れている。刃から刀の峰の方へと研がれた刀は、鋼の青い地肌を露わにしている。その地肌の上で光が雲模様に揺れている。鋼の地肌は皮膚の剥がれた肉のように見える。(P.177)

秀吉の朝鮮出兵に際し、小軍で大軍を打ち破り、今なお朝鮮半島において英雄として称えられている李舜臣(イスンシン)の、失脚直後から戦死するまでの物語。
粘性が強く、生暖かい液体の中に耳まで浸かっているような文に押し潰されそうになる。戦の悲しみが凝縮されていた。
人名にしろ地名にしろ耳慣れない言葉が多い。付録に時代背景と地図、朝鮮王朝時代の品階・官職名が記されていたものの、一気に覚えられるものでもなく、非常に読み難かった。他国の歴史小説を読む前には、ちょっと勉強しなければ面白くないと思い知った。。。