(05-017)

もう牛を食べても安心か (文春新書)

もう牛を食べても安心か (文春新書)

アメリカで発生した狂牛病はカナダ産とされたが、その感染源や同時期に移動されたはずの家畜の行方や発症の有無は全くわかっていない。そもそも、感染源とされる肉骨粉を牛に与えることは1996年の時点、つまりイギリスで狂牛病がヒトへ感染する危険性が顕在化した時点で禁止されたはずである。それなのに、なぜ狂牛病は発生し続けるのだろうか。アメリカの狂牛病に対する危機管理はどの程度のレベルなのだろうか。これらを見きわめることが専決事項のはずだった。

本著冒頭及び巻末では、福岡伸一氏の「怒り」が滲み出ている。狂牛病の起源から、タンパク質摂取の意味、消化のメカニズム、狂牛病が消化機構をすり抜けた方法、記憶について、狂牛病病原体の正体と日本における狂牛病について、アメリカのずさんな管理体制について、詳細かつ分かり易く説明されている。折りしも一昨日、食品安全委員会プリオン専門調査会が全頭検査の対象から生後20カ月以下の牛を除外する新たな基準を容認することで合意した。本著を読めば、現在の日本が如何に危うく愚かな方向に進んでいるのか、手に取るように分かる。福岡伸一氏に真っ向から反対する者の論理的説明を聞きたいものである。誰か良い本知りませんか?
前にも拙日記に記したが、我が家はあまり牛を食しない。たぶん一番牛を食べているのは、給食のある小学生の娘だ。家族で口にするものは選ぶことができるが、給食は選ぶことができない。保護者として、学校給食の動向はしっかりと監視していきたい。