【正論】お茶の水女子大学教授・藤原正彦 義務教育は地方分権になじまず】(産経 10/4)

義務教育の地方分権は誤りである。文科省の教育政策が信頼できないという気持ちは分かるが、地方自治体の教育委員会がより信頼できるわけではない。各都道府県がそれぞれの考えで教育をしたら国は瓦解してしまう。国語と算数を軸に、この国の文化、伝統、情緒、道徳を教え、祖国愛をはぐくむべき義務教育は、地方分権になじまない。義務教育は国防や外交と並び中央集権以外にありえない。

政治や経済をどう改革しようと、たかだか生活が豊かになるくらいで、魂を失った日本の再生は不可能である。いまできることは、時間はかかるが立派な教育を子供たちにほどこし、立派な日本人をつくり、彼らに再生を託すことだけである。教育とは、政治や経済の諸事情から超越すべきものである。人々がボロをまとい、ひもじい思いをしようと、子供たちだけにはすばらしい教育を与える、というのが誇り高い国家の覚悟と思う。

細部では賛成しかねる部分もあるが、概ね藤原教授に賛成。
教員が雇えないことによる弊害はたくさんあるだろう。一クラスの生徒数が自治体毎に大きく異なったり、先日問題になった様に、教科を兼務する教師が普通になる自治体も出てくるかもしれない。小中学校の生徒はまだ周囲の環境に流され易く、飛びぬけて優秀でない限りは、教育予算に恵まれない自治体の普通の一般家庭の生徒は"普通"に学ぶことさえ出来なくなってしまうかもしれない。それが何年も続いた場合、地域格差と貧富の差は目に見えて大きくなる可能性がある。
娘が通う市立小学校でも、越境通学している生徒が多数居る。子供に良い教育を提供したいと思うのは親として当然だ。
質の高い教育を受けてきた(と思われる)高級官僚や政治家は、自らの子供達は金をかけて私立に通わせれば良いと考えているのかもしれない。大学や短大への進学率が7割であり、どこでも同じレベルの教育が提供されていることに慣れきっているのかもしれない。
将来の日本を考えた場合、何が良いことなのか、じっくり考える必要がある。小手先の工夫では何れ破綻すると思う。