(05-058)

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

現在の日本では、内政におけるケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地政学的国際協調主義から排外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線で「時代のけじめ」をつける必要があり、その線が交差するところに鈴木宗雄氏がいるので、どうも国策捜査の対象になったのではないかという構図が見えてきた。(P.292)

小泉首相田中真紀子氏を外相に据えてから、外務省と外交が引っ掻き回され、そのあげく鈴木宗雄氏と共に逮捕・起訴された外交官 佐藤優氏の事柄説明的な本。
彼の書いていることが本当かどうか、僕には調べる力など無い。自画自賛を仄めかす文がより少なければ、彼の主張はもっと素直に心に響いたかもしれない。かといって、メディアが報じていたことも全てが真実ではなかっただろうとも思う。真実は約25年後に明らかになるだろうが、この事件のこと、そして彼のことをどの程度の人が覚えているだろうか。どの様な立場で読んだとしても、外交とロシア情勢の一端が垣間見ることができたのは事実であり、その点では読んだ甲斐はあった。
「あとがき」にある、本書のタイトルの元になった旧約聖書からの引用は気に入ったのでここでも引用する。

旧約聖書「コヘレトの言葉(伝導の書)」第九章十一−十二節、

太陽の下、再び私は見た。
足の速い者が競争に、強い者が戦いに
必ずしも勝つとはいえない。
知恵があるといってパンにありつくのでも
聡明だからといって富を得るのでも
知識があるといって好意をもたれるのでもない。
時と期会はだれにも臨むが
人間がその時を知らないだけだ。
魚が運悪く網にかかったり
鳥が罠にかかったりするように
人間も突然不運に見舞われ、罠にかかる。