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日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争はその規模においても、また用兵のレベルでも、利用された兵器のレベルからしても、さらには長期戦を支える前線と銃後の密接な関係からしても、この時期に頻繁に起こった植民地戦争とはまったく異なるものであった。ひとことでいえば、戦争は普仏戦争以来三十年以上も存在しなかった大国と大国の戦争だったのである。ここには、塹壕戦と機関銃の組み合わせ、情報と宣伝の利用能力、制海権の確保に関わる陸軍と海軍の連携など、ヨーロッパ諸国が第一次大戦で学ぶ戦争技術のほとんどが、明瞭に、もしくは萌芽の形で現れていた。ロシアは、日本を基本的に植民地レベルの国家とみなしていたために、厳しい試練を味わったのである。(P.194)

本書では、日本とロシアが戦争へと向かった背景、戦時中、戦後の国際情勢とそれぞれの国内情勢について丁寧に説明されている。
ロシア側と日本側の日露戦争観の違いが、非常に興味深かった。今、学校ではどのように歴史を教えているのだろうか。私世代の義務教育から変わらず、近代以降の歴史は駆け足で通り過ぎているままなのだろうか。現代日本の成り立ちを理解する上でも大切な近代日本史については、当事国のそれぞれの史実に対する解釈とその根拠を明示し、子供たちにじっくりと考える機会を学校は与えるべきだ。また、教師は自分の考えを生徒に押し付けるべきではない。国際社会における日本の現状を、偏ったメディアからの情報に惑わされずに自分で考える力はこれからより重要になるはずである。