(05-025)

診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界 (新潮文庫)

診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界 (新潮文庫)

皆さんも思い出してみて下さい。幼いときに心引かれた物語が、きっと皆さんの人生を導いてきたことに気づくはずです。人生のおりおりに鍵となったお話があったことに気づくはずです。人には誰にでも「自分の物語」があるのです。(P.199)

大平健氏の小説は以前読んだ「豊かさの精神病理 (岩波新書)」(岩波新書)と合わせて、本書で2冊目となる。
前回に違わず、本書も面白く読めた。いや、本書の方が面白かった。様々な心の病を抱える患者さん達のエピソードにぴったりの物語になぞらえて、その患者さん達の問題の「原因」を何気なく説明する。大平氏曰く、『患者が医者に「本当の問題」を見つけてもらったと感じてしまうこと』は、結果として『患者が解決の仕方まで医者に教わろうとする』という『困ったことが』生じるそうである。これは、子育てにも通じるし、仕事でも社会でも異なる意見を持つ人たちの間に立って調整を行なう場合にも通じることだろう。人を説得する場合にも通じる。相手が自ら気づかせるように、皮肉にならないように話をするというのは、ものすごいテクニックだ。どうしたらそういう風に話せるのか。ん〜、難しい。
本書の解説で南伸坊氏が感じたのと同じように、私も『私の「自分の物語」って何だろう?』と思った。まだ答えは見つかっていません。