(05-065)

<育てる経営>の戦略 (講談社選書メチエ)

<育てる経営>の戦略 (講談社選書メチエ)

本書では、成果主義を極端過ぎるほど非難し、経営者や人事担当者に対し、「日本型年功制」への回帰を強く促している。要は仕事の報酬はよりやり甲斐のある仕事であるべきで、金銭が第一位に来るべきではないとし、挙げられた事例は興味深いものが多かった。そして、最後に経営者や人事担当者には、人をじっくりと育てることを要望している。
丁度、2年半前位だろうか。ある部署で会議ばかりを繰り返していた時、労働者のモチベーションについてブレストを実施したことがある。僕の"やる気"の源泉は「達成感」だと答えた。次には「新しい経験」や「適切な報酬」が続いたと記憶している。結局のところ、「やり甲斐のある仕事があり、家族を食べさせていけるだけの報酬があれば十分だよね」といったところに落ち着いた。
その頃、会社は既に成果主義を導入していたし、評判は良くなかった。中には、時間経過とともに優先順位が低くなり消滅してしまった案件を目標に据えていた部下の評価をマニュアル通りに低くしていた酷い上司も存在した。逆に、絶対評価を皮肉って、自分の部下に高得点を乱発した上司も居た。幸い、僕は上司には恵まれており、じっくりと話し合うこともできたし、いずれの場合もそれ程不満を持つことは無かった。運が良かったのだろう。
本書は「360度評価」や「青色LED訴訟」についても言及している。前者に対する著者の意見は結果的に"導入反対"の立場を取るものの異なっている。著者は『寄ってたかって評価の名の下に「けなす」制度なのである(P.46)』としているが、僕は『寄ってたかって褒めちぎる』為に意味を成さない制度だと思っている。何れにしろ、ロクな評価方法ではないと思う。また、「青色LED訴訟」に対する意見には同意で、僕も一研究員が数百億円(最終的な数億円でも少々多い)という対価を求めることには激しい違和感を持っている。
今、僕は一社員として働いている。評価方法は成果主義だ。一つひとつの仕事に小さな達成感を得ながら、時に大きな達成感を得るためのチャレンジもする。評価は自ずとついて来るのだろうが、家族持ちで借金持ちの僕は報酬だってできるだけたくさん欲しい。なので、やっぱり所属する会社の評価方法を理解し、できるだけいい仕事に出会えるように、できるだけいい報酬がもらえるように努力する。でも、仕事に没頭するのは、家の外での話しだ。仕事以外の生活も大切にしたいので、家では仕事の話はしない。それが僕のペースなんだ。そんな僕でも、人から「一緒に仕事をしよう」と誘われるのはうれしかったし、これからもうれしいだろうと思う。こういった言葉を一番の評価だとする高橋伸夫氏に、実感を込めて同意する。