産経抄】(産経 5/17)

外国ではどうなのだろう。たとえば日本同様に性犯罪の多発に悩み、地下鉄もけっこう混雑するロンドンに住んだが、被害を聞いたことはなかった。痴漢行為どころか他人に体が少しでも触れただけで、「エクスキューズ・ミー」と声をかけあう習慣のせいかもしれない。

ロンドンの地下鉄は混雑するとは言っても、僕が2ヶ月程滞在した時に利用した地下鉄(Central Line)の混み具合は首都圏の通勤時のそれほど殺人的ではなかった。首都圏の電車では、ずっと複数の人と身体があたりっぱなしということはしょっちゅうだ。ただ、けっこうな勢いでぶつかってもひと言も発しない人が増えており、車内の空気がピリピリすることもしばしば。「失礼」とか「すいません」と口にするだけで、随分気持ちが和らぐのにね。

これからは肌の露出が目立つ季節だ。劇作家の福田恆存氏は、痴漢とは「そこまで素直に出した以上は−、と勘違ひしたせつかち」(「日本への遺言」、文藝春秋)のことだと言っている。今、そんな“勇気”のある発言をする人はいないが。

ここ(日刊スポーツ 5/16)にいた。この場合、"勇気"ではなくそれこそ痴漢(バカなおとこ)だ。凶悪な犯罪を犯した男の祖父のこの言葉、許し難い。甘やかすにもほどってもんがある。